真言宗泉涌寺派大本山 法楽寺

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‡ Khandha sutta [蘊経]

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1.Khandha sutta

蘊経

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パーリ語原文
a. [ R-a. / J-ab. ]
Sabbāsīvisajātīnaṃ,
Dibbamantāgadhaṃ viya,
Yaṃ nāseti visaṃ ghoraṃ,
Sesañcāpi parissayaṃ.

b. [ R-b. / J-ab. ]
Āṇākkhettamhi sabbattha,
Sabbadā sabbapāṇinaṃ,
Sabbasopi nivāreti,
Parittaṃ taṃ bhaṇāma he.

1. [ R-1. / J-1. ]
Virūpakkhehi me mettaṃ,
Mettaṃ erāpathehi me,
Chabyāputtehi me mettaṃ,
Mettaṃ kaṇhāgotamakehi ca.

2. [ R-2. / J-2. ]
Apādakehi me mettaṃ,
Mettaṃ dvipādakehi me,
Catuppadehi me mettaṃ,
Mettaṃ bahuppadehi me.

3. [ R-3. / J-3. ]
Mā maṃ apādako hiṃsi,
Mā maṃ hiṃsi dvipādako,
Mā maṃ catuppado hiṃsi,
Mā maṃ hiṃsi bahuppado.

4. [ R-4. / J-4. ]
Sabbe sattā sabbe pāṇā,
Sabbe bhūtā ca kevalā,
Sabbe bhadrāni passantu,
Mā kañci pāpamāgamā.

5. [ R-5. / J-5. ]
Appamāṇo buddho,
Appamāṇo dhammo,
Appamāṇo saṅgho,
Pamāṇavantāni sarīsapāni,
Ahi vicchikā satapadī,
Uṇṇanābhi sarabū mūsikā.

6. [ R-6. / J-6. ]
Katā me rakkhā katā me parittā,
Paṭikkamantu bhūtāni,
Sohaṃ namo bhagavato,
Namo sattannaṃ sammāsambuddhānaṃ.

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カナ読み
a. [ P-a. / J-ab. ]
サッバーシーヴィサジャーティーナム,
ディッバマンターガッダム ヴィヤ,
ヤム ナーセーティ ヴィサム ゴーラム,
セーサンチャーピ パリッサヤム.
b. [ P-b. / J-ab. ]
アーナーッケッタムヒ サッバッタ,
サッバダー サッバパーニナム,
サッバソーピ ニワーレーティ,
パリッタム タム バナーマ ヘー.
1. [ P-1. / J-1. ]
ヴイルーッパケーヒ メー メッタム,
メッタム エーラーパテーヒ メー,
チャビャープッテーヒ メー メッタム,
メッタム カンハーゴータマケーヒ チャ.
2. [ P-2. / J-2. ]
アパーダケーヒ メー メッタム,
メッタム ドヴィパーダケーヒ メー,
チャトゥッパデーヒ メー メッタム,
メッタム ダフッパデーヒ メー.
3. [ P-3. / J-3. ]
マー マム アパーダコー ヒムシ,
マー マム ヒムシ ドヴィパーダコー,
マー マム チャトゥッパドー ヒムシ,
マー マム ヒムシ バフッパドー.
4. [ P-4. / J-4. ]
サッベー サッター サッベー パーナー,
サッベー ブーター チャ ケーヴァラー,
サッベー バドラーニ パッサントゥ,
マー カンチ パーパマーガマー.
5. [ P-5. / J-5. ]
アッパマーノー ブッドー,
アッパマーノー ダンモー,
アッパマーノー サンゴー,
パマーナヴァンターニ サリーサパーニ,
アヒ ウィッチカー サタパディー,
ウンナナービ サラブー ムーシカー.
6. [ P-6. / J-6. ]
カター メー ラッカー カター メー パリッター,
パティッカマントゥ ブーターニ,
ソーハム ナモー バガヴァトー,
ナモー サッタンナム サンマーサムブッダーナム.

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日本語訳
a.-b. [ P-a. / R-a. ]
すべての毒蛇、あらゆる恐ろしい毒とその他の危険とを打ち砕く、聖なる薬たるマントラ(真言)のように、(このカンダ・パリッタの)威力の及ぶ範囲では、どのような場所でも、いついかなる時でも、ありとあらゆる生命にとっての(災いを)打ち砕く。 さあ(友らよ)、この護経を誦えよう。
1. [ P-1. / R-1. ]
(竜の一族たる)ヴィルーパッカに、我が慈しみのあらんことを。(竜の一族たる)エーラパッタに、我が慈しみのあらんことを。(竜の一族たる)チャビャープッタに、我が慈しみのあらんことを。(竜の一族たる)カンハーゴータマカに、我が慈しみのあらんことを。
2. [ P-2. / R-2. ]
地を這う者ら(無足類)に、我が慈しみのあらんことを。二つの足で地を歩む者ら(二足類)に、我が慈しみのあらんことを。四つの足で地を歩む者ら(四足類)に、我が慈しみのあらんことを。多くの足で地を歩む者ら(多足類)に、我が慈しみあらんことを。
3. [ P-3. / R-3. ]
地を這う者らは、我を害さぬよう。二つの足で地を歩む者らは、我を害さぬよう。四つの足で地を這う者らは、我を害さぬよう。多くの足で地を歩む者らは、我を害さぬよう。
4. [ P-4. / R-4. ]
生きとし生けるものよ、全ての呼吸せるものよ、そして一切の生まれしものよ、それら一切のものに、吉祥の現前せんことを。なんであれ悪しきことは、(我々のもとへ)来てはならない。
5. [ P-5. / R-5. ]
仏陀は無量(その功徳の計り知れないもの)である。法は無量である。僧伽は無量である。地を這う者ら、蛇、さそり、百足、蜘蛛、トカゲ、鼠は有限である。s
6. [ P-6. / R-6. ]
守護は我によってなされり。防護は我によってなされり。(危害をもたらす)生けるものよ、立ち去れ。我、世尊に帰依す。七人の正等覚者に帰依す。

日本語訳:沙門 覺應

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2.解題

”パリッタ”

Khandha sutta[カンダ・スッタ]とは、主として、毒蛇・さそり・百足・蜘蛛・トカゲ・鼠など人に害をなすあらゆる動物からの危難を避けるために唱えられるパリッタです。Khandhaは、「集まり」あるいは「本体」との意であり、一般に漢語では「蘊」と訳されます。故に、日本では現在、カンダ・パリッタに「蘊経[うんきょう]」との漢語訳が付せられることが多いようです。

(カンダ・スッタとの題目を、意味の通じる日本語に訳するのは少々困難であるため、ここではあえて日本語訳を付しませんでした。)

カンダ・スッタは、Vinaya Pitaka[ヴィナヤ・ピタカ](律蔵)はCūla-vagga[チューラ・ヴァッガ](小品)から出されたもので、Sutta[スッタ](経典)というより、まさに正しくParitta[パリッタ](護呪)と言えるものです。実際、序にて触れたように、Milindapañha[ミリンダパンハ](『那先比丘経』)においては、Khandha suttaではなく、Khandha"paritta"として挙げられています。

カンダ・スッタは、仏陀から比丘がパリッタを用いることを許された最初のものです。律蔵の、いかなる因縁によって、比丘が毒蛇などの諸危難から身を護るために、パリッタ(護呪)を用いて良いとされたかを伝える箇所に、このパリッタが説かれています。

では、何故ブッダは比丘達にパリッタを用いても良いとされたのか。律蔵はどのような因縁を伝えているのか。

それは、ある時、一人の比丘が毒蛇に咬まれ、命を落としたことをきっかけとしています。彼の死の報告を受けたブッダは、他の比丘達に言います。「彼の比丘は、蛇たち(四つの蛇王族)に対する慈悲が欠けていたために、毒蛇の害を被り、死んだのである」と。そして、比丘が四つの蛇王族を代表とする毒蛇(など人に害をなす獣)から身を護るために、パリッタを唱えても良いとの許可が下されます。そこで、説かれたのがこのカンダ・パリッタです。

このパリッタの要は、ただこれを唱えると言うことではなく、ありとあらゆる生命に対しての「慈心」を持つことです。慈心を持った上で、このパリッタを唱える者を、死に至らしめる者ない、というのがこのパリッタの功徳です。

おそるべき毒蛇たち

今でも、南方、特にビルマとスリランカなどにおける、これは決して多数ではなくごく少数ですが、都市部ではなく森林(ジャングル)や山間部にて修行する比丘達にとって、毒蛇や害獣・毒虫などは、大きな脅威です。

水浴のあと、壁に掛けておいた袈裟を取ろうと手を伸ばすと、なんとそこには大きなコブラ。その大きく、そしてとても美しい丸い目でジッとこちらをにらみ付け、今にも飛びかかろうとの構えでいるかのよう。そこを慌てず騒がず、静かにそろそろと後ろに下り、裸のまま扉の外へ出てやり過ごす。夕暮れや陽の出前後の暗がりの小道を通り抜ける時、小さくも美しい黄色や緑色の蛇、あるいは百歩蛇など猛毒をもつ蛇が這い進んでいるのを寸前まで認めることが出来ず、あと一歩で踏みつけ、当然咬まれるところであった。ちょっとその下を潜ろうとした、その木の枝に、猛毒を持つ蛇が垂れ下がってチロチロと下を出してこちらを見ていた、等々それほど珍しいことではありません。

そのような土地では、蛇に咬まれると言うことは、ほとんど「死ぬ」のと同じ事を意味しており、毎年僧侶だけではなく村人達が、実際に多く命を落としています。

蚊や虻、蛭、そして南京虫などは、好ましからぬも日々共存している「隣人」である為に問題外として、毒蛇はもとより虎や野生の象、その他の危険な寄生虫・毒虫など動物・昆虫による、往往にして生命に関わる難など、場所によっては蝿ですら目にするのが稀になり、男ですらゴキブリを見ただけで悲鳴を上げるような現代日本で暮らす者には、まったく想像すら出来ないでしょう。

この点、仏陀ご在世の北インドと今の南方の状況とは、あまり変化無いのかもしれません(風土的なことでいえば、むしろ蛇などの危難は南方の方が多いに違いないでしょう)。

慈心こそ

しかしまた、これはAṅguttara-nikāya[アングッタラ・ニカーヤ](増支部)のCattukanipāta[チャットゥカニパータ]の第7経である、Ahirāja sutta[アヒラージャ・スッタ](蛇王経)という小経の中にも、このパリッタが収められています。

そしてさらに、Jātaka[ジャータカ](本生譚)には、Khaṇḍa-jātaka[カンダ・ジャータカ](第203話)として、まるごとこのパリッタが収録されています。ジャータカの注釈書Jātaka Aṭṭhakathā[ジャータカ・アッタカター]では、この一説は、釈尊がKāsī[カーシー]で生まれた苦行者だった前世の話に基づくものであると注しています。

当時、カーシーの苦行者で、毒蛇に咬まれて死ぬ者が大勢出るようになったとの報告を受けた菩薩たる苦行者は、他の苦行者達を集め、いかにして毒蛇など害なす動物から身を護るかを教えます。それは、彼らに対して慈しみを持つことであると。それが上に説かれたパリッタの内容であり、この菩薩によって慈しみを持つことの教授がなされた後は、毒蛇によって命を落とす者がなくなったと言います。

この話は、律蔵におけるそれと、話の流れとしてはほとんど同様のものです。ジャータカのこの話に依れば、カンダ・パリッタが、釈尊の前世からすでに用いられていたものである、ということになります。そして、ここでもやはり、重要な点は慈しみを持つことと言われています。

沙門 覺應
(horakuji@live.jp)

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