真言宗泉涌寺派大本山 法楽寺

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‡ 慈雲『麁細問答』

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1.原文

問ふ、天台宗の長所いかに。

答ふ、智者大師の徳行仰ぐべし。その円解も信ずべきなり。法華の諸喩によりて諸経を斟酌し給ふに可なり。次第法門には印度諸禅師の趣とも見ゆる処あり。初禅までは其の親言親口と見ゆるなり。

問ふ、その短所いかに。

答ふ、智者大師の辯舌は誠に可なり。後の荊溪四明山家山外の争に至り、我が朝に此を伝へて、動もすれば聖文を見聞して、此は何部の教、何時の経ぞと凡慮を以つて佛語を斟酌する者多し。此に至りて自性善の信根を破るに至る。恐らくは悪趣の業因なるべし。

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2.現代語訳

(座元が)質問した。
「天台宗の長所はどのようなものでしょうか?」

(慈雲尊者)答えて曰く、
智者大師*1 の徳行は尊敬すべきものである。その円解(えんげ)*2 も信ずるに足るものである。法華経にある諸々の喩え話に基づいて、数多くの経典を斟酌(しんしゃく)*3 されたのもよろしい。『次第法門(しだいほうもん)*4 』には、インドの禅師達と同様の主張とも思える箇所がある。修行者が、初禅*5 にいたるまでは、それは親の言葉のように、頼るべき確かなものと言えるだろう(=それ以上の境地に向かうとなれば、頼るべきモノとは言えない)」

(座元が重ねて)質問した、
「天台宗の短所はどのようなものでしょうか?」

(慈雲尊者)答えて曰く、
「智者大師智の残された思想は、誠によろしいものである。(しかし)後代の溪荊湛念(けいけいたんねん)*6 四明知礼(しめいちれい)*7 山家*8 山外*9 といった見解の相違が起こって相争うようになった。日本にこれが伝わると、(それを知った天台の僧達は)ややもすれば経典の文章を読んでは、(智者大師の「五時八教」などの経典分類法によって)「此は何部の教えにあたるものだ。何時の経だ」などと凡慮(ぼんりょ)*10 によって、佛陀の言葉を(無意味に)斟酌する者が多い。これによって、人の心に宿る、善なる信根を破ってしまうことになる。おそらく悪趣(あくしゅ)*11 に堕ちる原因となるに違いない」

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3.脚注

*1 智者大師(ちしゃだいし)…天台宗の実質的開祖、智(ちぎ゙)のこと。天台大師とも。→本文に戻る

*2 円解(えんげ)…滞りのない理解。ここでは智者大師による『法華経』を中心として体系化した仏教の理解。→本文に戻る

*3 斟酌(しんしゃく)…比較して取捨選択すること。ここでは智者大師が行った教相判釈である「五時教判(ごじきょうはん)」を指す。→本文に戻る

*4 『次第禅門(しだいぜんもん)』…天台大師の著作の一。→本文に戻る

*5 初禅(しょぜん)…冥想に於ける境地の一。または仏教の世界観、六道輪廻における天界の一つである、梵天の世界。ここでは前者の意。→本文に戻る

*6 溪荊湛念(けいけいたんねん)…支那唐代の僧。天台宗中興の祖。妙楽大師(みょうらくだいし)とも。智の著作の注釈を多く著した人。→本文に戻る

*7  四明知礼(しめいちれい)支那宋代の僧。天台宗第十七祖。四明山に住して天台の教学を振興した。→本文に戻る

*8 山家(さんけ)…知礼の学系を継ぐ一派。天台の正統学派と主張されている。→本文に戻る

*9 山外(さんげ)…知礼の教学に論難、対抗した源清(げんせい)らの教学。天台宗においては、天台教学より華厳教学への片寄りがあるとされ、天台の非正統学派とされている。→本文に戻る

*10 凡慮(ぼんりょ)…凡人の浅はかな考え。→本文に戻る

*11 悪趣(あくしゅ)…六道輪廻の中、最も忌むべき地獄・餓鬼・畜生の三つの境涯。→本文に戻る

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