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十戒[じゅっかい]とは、仏教の見習い男性出家者である沙弥[しゃみ]ならびに同女性出家者の沙弥尼が保たなければならない、出家の戒です。
サンスクリットでDaśa śikṣāpadāni[ダシャ・シクシャパダーニ]、パーリ語でDasa sikkhapadāni[ダサ・シッカパダーニ]と言います。あるいはまた、単にDaśa sīla[ダシャ・シーラ]またはDasa sīla[ダサ・シーラ]とも呼称されます。
(沙弥についての詳細は、”仏教徒とは何か-沙弥-”ならびに”沙弥尼”を参照のこと。)
十戒は、すでに触れたように、具足戒いわゆる律(Vinaya)を受けて正式な出家者たる比丘になる前の段階の者、見習い出家者に対して説かれた戒です。
śikṣāpadaまたはsikkhapadāとは、「学ぶべき所」「学ぶべき事」という意味で、漢訳ではそのまま「学処」などと訳されています。言葉としての意味は、Sīla(戒)とほとんど異なることはありません。しかし、十戒の場合は、沙弥である以上「必ず」守らなければならない義務であるという点で、他の在家の戒とは大きく異なります。
さて、十戒とは、以下の内容のものです。
No | 戒 | 戒相(抄) |
---|---|---|
1 | 不殺生戒 | いかなるものであれ、故意に生命を殺傷しない。 |
2 | 不偸盗戒 | 与えられていない物を、みずからの物としない。 |
3 | 不婬戒 | 相手が男女・天人・獣、自慰であれ、一切の性行為をしない。 |
4 | 不妄語戒 | 故意に虚言を吐かない。 |
5 | 不飲酒戒 | 穀物酒であれ果実酒、薬酒であれ、一切の酒類を飲まない。 |
6 | 不塗飾香鬘戒 | 身体を、装飾品や香水などつけて飾らない。 |
7 | 不歌舞観聴戒 | 音楽や舞踏、映画など演芸の類を鑑賞しない。 |
8 | 不坐高広大牀戒 | 高く広い椅子・寝台で休まない。 |
9 | 不非時食戒 | 正午から翌日の日の出まで、一切の固形物を食さない。 |
10 | 不蓄金銀宝戒 | 金銀財宝、金銭に触れ、蓄えない。 |
沙弥または沙弥尼には、三宝に帰依し、頭を剃って上下二種の袈裟をつけ、比丘となってから十年以上で仏教の教えと戒律に通じ、指導力のある年長の比丘または比丘尼に請うて、上に挙げた十戒を受けることによってなることが出来ます。
この時、十戒を授けてくれた比丘(比丘尼)が、ここで出家した者にとって生涯の師となります。これを和上(和尚)といいます。サンスクリットUpādhyāya[ウパーディヤーヤ]あるいはパーリ語のUpajjhāya[ウパッジャーヤ]の音写語とされる言葉です。
和上は弟子の僧侶としての教育や住まいなどの面倒を見、弟子は和上の身の回りの世話や様々な用事を行い、互いに病気の時は必ず看病しなければならないなど、双方に義務・責任が生じます。
故に、出家してからの年数が多いからといって誰でも彼でもが和上となれるわけではなく、様々な徳が無ければならない、と律蔵では規定されています。和上はいわば出世間における父親であり、実際、師匠と弟子との関係は、父と子とのそれのようであれ、と仏陀によって言われています。
(もっとも、子供が父親を選べる、と言うことが、世俗のそれと大きく異なる点といえるでしょう。いかなる師の元に付くかは、弟子にとって相当に重大な問題で、弟子の行く末が大きく左右される場合が多々あり、故にその選択は慎重にしなければなりません。)
沙弥(沙弥尼)には十戒を受けてなることが出来るとはいえ、沙弥にはその他に守らなければならない数多くの決まり・禁止事項があります。それらを犯した場合、沙弥にも和上から何らかの罰が与えられます。
特に沙弥がまず守らなければならないのは十戒ですが、これらを沙弥が故意に犯したならば、最悪の場合、和上の元から追い出されます。和上の元から追い出されることは、沙弥にとって「還俗」に等しいものです。
No. | 戒相(抄) |
---|---|
1 | いかなるものであれ、生命を故意に殺傷する。 |
2 | いまだ与えられないものを、故意に我が物とする。 |
3 | 男性・女性・天人・獣など対象を問わず、性交渉する。 |
4 | 故意に虚言する。 |
5 | 穀物酒・果実酒、薬酒など、酒類を飲む。 |
6 | 仏陀を誹謗する。 |
7 | 仏法を誹謗する。 |
8 | 僧伽を誹謗する。 |
9 | (常見や断見など、輪廻転生・四聖諦・八正道を否定する)邪見を持つ。 |
10 | 比丘尼を犯す。 |
No. | 戒相(抄) |
---|---|
1 | 正午から翌日の日の出までの不適切な時間(非時)に、固形物・乳製品を採る。 |
2 | 音楽や舞踏、映画など演芸の類を、故意に鑑賞する。 |
3 | 身体を、装飾品や香水などによって飾る。 |
4 | 高く広い椅子・寝台で休む。 |
5 | 金銀財宝・金銭に触れ、蓄える。 |
6 | 比丘の利益を妨げるように努める。 |
7 | 比丘の住居を失うように努める。 |
8 | 比丘に損失を与える。 |
9 | 比丘を誹謗する。 |
10 | 僧伽を分裂させる。 |
非人沙門覺應(比丘慧照) 敬識
(By Araññaka Bhikkhu Ñāṇajoti)
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