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現代語訳
漉水嚢第六物賞看病中。則以針筒爲六。今準二衣篇首列之
初制意鈔云。物雖輕小所爲極大。出家慈濟厥意在此。今上品高行。尚飮用蟲水。況諸不肖焉可言哉。四分不得無漉袋。行半由旬二十里也 無者僧伽梨角漉。二漉法者。薩婆多云。欲作住處。先看水中有蟲否。有者作餘井。猶有者捨去。凡用水法。應清淨者。如法漉置一器中。足一日用。令持戒審悉。漉竟著淨器中。向日諦視看。故有者如前説即作餘井捨去 然水陸空界。無非皆是有情依處。律中。且據漉嚢所得。肉眼所見以論持犯耳。三作嚢法多論。取上細㲲一肘作嚢此間宜用密練絹作 僧祇。蟲太細三重作。四分作漉水袋。如杓形。若三角。若作宏㨯。若作漉瓶。若患細蟲出。安沙於嚢中。漉訖還著水中此是私用者。若置於衆處。當準寄歸傳式樣。用絹五尺。兩頭立柱。釘鉤著帶繋上。中以横杖撑開。下以盆盛等 鈔云。今有不肖之夫。見執漉嚢者言。律學唯在於漉袋。然不知所爲處深。損生妨道者。猶不畜漉袋。縱畜而不用。雖用而不瀉蟲。雖瀉而損蟲命。且存殺生一戒。尚不遵奉。餘之威儀見命。常沒其中不加受者。輕小物故。或常持故。如律無者。不得行半由旬是也 昔孤山嘗著漉嚢誌。乃云。懸於草堂。以備法物之數。如用之則未能也。余謂中庸子。知教孰不知教。來者幸無取焉
智論云。受持禁戒爲性。剃髮染衣爲相。然濁世凡庸。鮮能修奉。且憑儀相。用光遺教。苟内外都亡。則法滅無日。願諸上徳。同志持危。即華嚴云。具足受持威儀教法。能令僧寶不斷。受佛遺寄。得其人矣。
佛制比丘六物圖
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漉水嚢1第六物賞看病2の中には、則ち針筒を以て六と爲す。今は二衣の篇首に準じて之を列す
初めに制意。鈔3に云く、物輕小なりと雖も所爲極大なり。出家の慈濟厥の意、此に在り。今上品の高行すら、尚ほ蟲水を飮用す。況んや諸の不肖は焉ぞ言ふ可けんやと。
四分4には、漉袋無くして半由旬5二十里なりを行くことを得ざれ。無くんば僧伽梨の角を以て漉すべしと。
二に漉法6とは、薩婆多7に云く、住處を作らんと欲せば、先ず水中に蟲有るや否やと看るべし。有らば餘の井を作れ。猶ほ有らば捨て去れ。凡そ水を用ひる法は、應に清淨なるべき者なり。如法に漉して一器の中に置て、一日の用に足すべし。持戒審悉の者をして、漉し竟て淨器の中に著けて、日に向ひて諦かに視看せしめよ。故らに有らば前の説の如くせよ即ち餘の井を作り捨て去れ。
然れども水陸空界は、皆是れ有情の依處に非ずと云ふこと無し。
律8の中には、且らく漉嚢の得る所、肉眼の見る所に據て、以て持犯を論ずる9のみ。
三に作嚢法10。多論11に、上細の㲲一肘を取て嚢を作ると此の間には宜しく密練の絹を用ひて作るべし12。
僧祇13に、蟲太だ細なれば三重に作るべしと。
四分14に、漉水袋を作ること杓形の如くすべし。若しは三角、若しは宏㨯に作れ。若しは漉瓶に作れ。若し細蟲の出んことを患へば、沙を嚢中に安じて、漉り訖て還て水中に著けよと此は是れ私用の者なり。若し衆處に置かば、當に寄歸傳の式樣15に準ずべし。絹五尺を用て、兩頭に柱を立て、鉤を釘うちて帶を著け、上に繋げ。中に横杖を以て撑へ開て、下に盆を以て盛る等 。
鈔16に云く、。今不肖の夫有り。漉嚢を執する者を見て言く、律學は唯だ漉袋に在りと。然れども所爲の處深きことを知らず。生を損し道を妨ぐる者にして、猶ほ漉袋を畜へず。縱ひ畜ふとも而も用ひず。用ふと雖も而も蟲を瀉さず。瀉すと雖も而も蟲命を損ず。且らく殺生の一戒を存するすら、尚ほ遵奉せず。餘の威儀・見・命は、常に其の中に沒せり受を加へざるは、輕小の物なるが故なり。或は常に持するが故に、律の如き、無くんば半由旬を行くこと得ざれと云ふ、是れなり。
昔孤山17、嘗て漉嚢の誌を著はして乃ち云く、草堂に懸て、以て法物の數に備ふと。之を用ふるが如きは則ち未だ能はざるなりと。余謂く、中庸子、教を知らば孰れか教を知らざらん。來者、幸くば取ること無かれ。
智論18に云く、受持禁戒を性と爲し、剃髮染衣を相と爲すと。
然れども濁世の凡庸は、能く修奉すること鮮し。且らく儀相に憑て、用て遺教を光す。苟とに内外都亡せば、則ち法滅し日無けん。願くは諸の上徳、志を同じくして危を持せよ。
即ち華嚴20に云く、威儀の教法を具足し受持せば、能く僧寶を斷へざらしむと。
佛の遺寄を受くること、其の人を得ん麦。
佛制比丘六物圖
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漉水嚢第六物 『行事鈔』賞看病人六物羯磨では、針筒をもって第六物としているが、ここでは『行事鈔』の二衣の篇首に準じて之を列す
《第一 制意》
『行事鈔』には、「物としては軽く小さくとも、その目的は極めて大なるものである。出家者の生けるものを慈済せんとの意はここにある」とある。
今時は、上品にして高行なる僧であっても、(漉水していない)虫を中に含んだ水を飲用している。ましてや諸々の不肖なる僧など言うまでもない。
『四分律』には、「漉袋を持たずに半由旬二十里也として外出してはならない。もし携帯していなかった場合は僧伽梨の角をもって水を漉せ」とある。
《第二 漉法》
『薩婆多論』には、「住房を作ろうとする際には、先ず(そこにある井〈水を溜める場所・容器〉の)水に虫の有無を観察しなければならない。もし、有るようならば他の井を作れ。それでもなお有るならば(その水を虫が害されないところに)捨て去れ」とある。
およそ水を用いる法は清浄でなければならない。如法に漉して一器の中に溜め、一日の用に足すべきである。持戒審悉の者に、漉した水を溜めた浄器の中を、太陽に向かって詳らかに観察させよ。もし虫の有ることが判明したならば、前述の如くせよすなわち他の井を作って捨て去れ。
しかしながら、水中・陸上・空中はすべて、有情〈生ける物〉の住処でないところなど無い。律では一応、漉水嚢によって(生ける虫を飲まぬように)する範囲は、肉眼によって見えることを限りとし、それによって持犯を論ずるのである。
《第三 作嚢法》
『薩婆多論』には、「上細の㲲〈綿布〉一肘を取て嚢を作る」とある今時は密練の絹を用いて作るのが良いであろう。
『摩訶僧祇律』には、「虫は極めて微細なものであるから(漉水嚢は)三重に作らなければならない」とある。
『四分律』には、「漉水袋を作るのには杓形のようにせよ。もしくは三角、もしくは宏拡に作れ。もしくは漉瓶のように作れ。もし微細な虫を漉し漏らしてしまうことを心配するのであれば、砂を嚢の中に入れ、漉しおわってから(その砂を)水中に撒け」とあるこれは私用のものについてである。もし共用の処に置くものであれば、『南海寄帰内法伝』が伝える様式に準じて作れ。絹五尺を用いて、両頭に柱を立て、鉤を釘打って帯を付け、上に繋げ。中に横杖でもって支え開いて、下に盆を置く等するのである 。
『行事鈔』には、「今、不肖の男があって、漉水嚢に固執する者〈律僧〉を見て『律学とは単に漉袋にある』などと言う。しかしながら、(彼は、持戒の僧が漉水嚢の製法・用法に拘る)理由・目的に深いものがあることを知らず、生命を損ない、道を妨げる者であって、やはり漉袋を所有していない。たとい所有していたとしても使用しない。使用していたとしても(漉し取った)虫を水中に戻さない。戻したとしても虫の命を損なう。殺生の一戒という明瞭なるものをすら、なお遵奉しないのであれば、他の諸々の威儀・見解・活命(についての教や律)は、常にその中に没して顧みられはしないのだ」とある。
(漉水嚢については)受法を行わないのは、軽小の物であるためである。あるいは常に所持するものであるためである。律に説かれる「所持していなければ半由旬として外出してはならない」というのがそれである。
その昔、孤山〈智円法師〉が漉水嚢についての記録を著して、「(漉水嚢などというものは)草堂の壁に掛けておくだけのものであって、それで(比丘が所有すべき)法物の数のうちに入れるのみである。これを実際に用いるような者は、いまだ修行が足りていない愚か者である」などと述べていた。
私にいわせれば、中庸子〈智円法師〉(のような無知なる者)が教えを知っているというのであれば、教えを知らない者などどこにも存在しないことになろう。新学の人は、どうか(智円法師の主張を)真に受けることがないように。
『大智度論』には、「(比丘僧とは)禁戒を受持することを本性とし、剃髮・染衣をその外相とするものである」とある。
しかしながら、濁世〈仏滅後、人倫乱れた時代〉の凡庸なる僧は、(禁戒を)よく奉修することがほとんど無い。ここでは仮に(比丘の本来の)儀相について、(様々な根拠を)示して(釈迦牟尼仏の)遺教を明らかにした。もしも内外〈性相〉の全てが滅んでしまったならば、たちまち法は滅び、太陽は失われてしまうであろう。願わくば諸々の上徳らよ、志を同じくしてこの危機意識を持て。
すなわち『華厳経』には、「威儀〈律〉の教法を具足し受持したならば、僧宝は途絶えることはない」と説かれている。
仏陀の遺寄〈遺嘱・遺勅〉を受けるのは、まさにそのような人である。
仏制比丘六物図
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現代語訳 脚註:非人沙門覺應
horakuji@gmail.com
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